●稽古する学生の姿に感動
楽器の収集と併せて剣道具や柔道着も提供され、送り先の定まっていない柔道着のストックが多くなっていた。そのような中、2016年3月バゴ市立大学を訪問しパロコ学長と面会した時、同大学に柔道部があり、レイモンド氏を紹介された。早速、保管してある柔道着をバゴ研修センターを経由して届けることを約束した。同年8月茨城推進協議会のツアーで大学を訪問し、柔道の稽古を見せてもらった。体育館のコンクリートの床にマットレスを敷いたコートで、カラス監督のもとに素晴らしい稽古ぶりを見学することができて感動した。
●仮屋先生との出会い
茨城県柔道連盟副会長 講道館7段の仮屋茂先生と茨城県青少年育成協議会の会合で会うことができた。茨城推進協議会が長年にわたってネグロス島を応援していることを伝えると、「ぜひ行ってみたい」と懇願され2015年3月ネグロス島を案内した。仮屋先生は、鹿嶋市スポーツ少年団で地域の子ども達に柔道を教えるとともに、ドイツやフランス、カナダ、韓国などで柔道の指導をしており、度々海外に出かけられている。九州の出身で、住友金属鹿島製鉄所で長年働き、退職後は鹿嶋市に住んでいる。ネグロス島を訪問した仮屋先生は、「これまでドイツやフランスで柔道の指導をしてきたが、これからはネグロス島の若者に柔道を教えることに力を尽くしたい」と意欲を示されていた。
●バゴ市立大学でスタート
仮屋先生の指導は、バゴ市立大学からスタートした。柔道部の部室には、嘉納治五郎先生の写真が飾られていた。稽古の畳は、入手することが困難なことからマットレスを敷き詰めての稽古である。稽古をしているとマットレスの間に隙間ができてしまうので、時々隙間を詰めてのトレーニングである。これを見た仮屋先生が、「マットレスの上で稽古をしていて、畳の上で試合をすることは大変な不利である」と言われた。
●柔道用畳の提供
帰国するマニラからの機内において、仮屋先生から鹿嶋市の中学校で使われないで保管してある畳をバゴ市立大学に送ろうとの提案があった。これを実現するため、オイスカ本部がフィリピンに大型の物資を送っている方法などのアドバイスを受け、2017年7月東京の貿易会社に依頼して畳32枚を送ることができた。イ草でできた畳は貿易上輸出することが難しく、化学製品でできた畳である必要があった。幸い、鹿嶋市の畳は条件に合い送ることができ、8月にバゴ市立大学で贈呈式を行い、同時に市役所を訪問してバゴ市長に目録を贈呈した。また、より多くの学生が稽古できるようにするため、2019年8月には畳の代用品となるラバーマット108枚を提供した。
●多くの柔道着の提供
埼玉生協からは毎年柔道着の提供をいただきネグロス島に届けている。生協の会員さんがクリーニングや洗濯をし提供してくれるのである。2020年からは群馬生協からも柔道着が届くようになった。その他オイスカ長野支部、東海大学からもバゴ市立大学にたくさんの柔道着の提供があった。
●他の大学へ普及
ネグロス島の大学生は、卒業後は女子は教師に、男子は警察や軍隊に就職する傾向にある。このため、各大学には犯罪学科が設けられていて、柔道や空手、フィリピンの伝統武術などが必須科目になっている。従って柔道を希望する学生も多く、他の大学においても柔道指導の要望が強かった。ラカロータ市立大学、ユノア私立大学、カバンカラン市の州立大学など、仮屋先生と一緒に訪問して柔道指導についての協議を進めていった。ラカロータ大学へは、柔道着及び畳30枚を提供し、レイモンド氏の指導により定期的に柔道の授業が行われている。
●ネグロス大学柔道大会の開催
2018年2月バゴ市立大学においてラカロータ市立大学の参加を得て、第1回ネグロス大学柔道大会を開催することができた。大会は、「KARIYA・ONOSE CUP」と呼ばれている。将来的にはネグロス島内に柔道を普及し、多くの大学の参加の下に大会が開催できることを願っている。
●バゴ市立大学生の来日
現地での柔道指導者を育成することも大切である。バゴ市立大学を訪問した時、柔道部員のケレル氏から「ぜひ日本で柔道の稽古をしたい」と強く言われた。これを受けて2018年10月にレイモンド氏とケレル氏の2人の学生を1か月間茨城で受け入れ、柔道の稽古をしてもらった。講道館での稽古、鹿島地区の画工での稽古など多くの体験をしてもらった。次の年は同じく受動部のパトリック氏、エレンさんに1か月間ホームスティして稽古をしてもらった。
●第2回ネグロス大学柔道大会の開催
新型コロナウィルスの感染拡大により2020年にはネグロス島を訪問できなかったが、バゴ市立大学柔道部の努力により第2回ネグロス柔道大会を同大学で3月に開催することができた。今後は、小・中学生への柔道の普及に力を入れていく考えである。